松田 茂伸氏(東京)

 150年前、鉄道や船、橋など、近代社会の基盤を築いたとされる英国のブルネル(18061859)の当時の洋服を再現していると言う全日本洋服技能士会連合会・松田茂伸会長(東京、テーラー松田)。

「古いものが新しい時代にテーラーの技術はとても大事だ」と語る。そのパンツのイラスト、現在作っているものを見せながら、これからの職人、技術の大切さを力説した。

現在、鉄道の父と称されるブルネル(英国、没後200年)の洋服を作っているが、その一つがパンツ。これは、ジッパーがなかった時代、前をボタンで留めて、これを外して下へ降ろせば用を足せるといもの。テーラーとしての手仕事が生かされているが、このような古いスタイル、非常にアナログでノスタルジックなファッションが、今の若者には新鮮に映るようだ。イラストと実際に作っているものを見て、時代を感じ取ってもらいたい。

 われわれのお客は4050代でしょう。袖穴が4つ、5つ、穴糸の色を変えたり、ノータック、絞ったウエスト、コンケープなどが好まれたりしている。ちょうど、丁稚奉公で技術を一生懸命勉強していた時代にやっていたことだが、こうしたことが今日の購買を喚起している。古いものが新しい。技術者であり職人である我々は、常に流行をキャッチしながら、発想、頭を使い、前向きに取り組んでいかなければならない時代。かつての技術に、一味加えることで、今日の洋服として評価されるでしょう。

 今回のブルネル時代の洋服再現は、蝋人形に着せ付けるもので、千葉大学からの依頼で進めている。時代考証、資料の収集等、歴史を学び、実現する。テーラーの技術はいつの時代であっても、ここ一番必要とされるでしょう。(全日本洋服技能士協会・第36回大会にて)

150年前、英・ブルネルのパンツを再現